無線周波(RF)電磁界によってヒトの睡眠に生じるかも知れない影響を調べた実験研究の結果は一貫性がなく、これまでのところ、この影響における性差の可能性についての研究はない。この研究は、健康な高齢男女の睡眠のマクロ構造に対するRF電磁界の影響における差異を調べた。健康な高齢男女30人のボランティア被験者における2種類のRF電磁界(GSM900及び地上基盤無線(TETRA))の影響を、二重盲検、無作為化、擬似ばく露対照、クロスオーバーデザインを用いて調べた。被験者は3つのばく露条件(GSM900ばく露、TETRAばく露、擬似ばく露)で3セット(合計9夜、それぞれ個別に無作為化した順序で)受けた。入眠前の30分間及び夜間全体(7.5時間)を通じて、この研究用にデザインした頭部装着型アンテナからばく露を行った。頭部組織における空間ピーク比吸収率(psSAR)は、TETRAで6 W/kg、GSM900で2 W/kgであった。睡眠及び覚醒のマクロ構造を特徴付ける30個の変数、ならびに4個の主観的な睡眠変数を、統計的分析で考慮した。多変量解析の結果、GSM900及び/またはTETRAばく露は覚醒の有意な減少、睡眠ステージN3までの潜時の短縮、自己申告による睡眠後の覚醒時間の短縮が、男女共に認められた。性別依存的なばく露の影響(有意な相互作用)が認められた。どちらのばく露条件でも、睡眠ステージRまでの潜時は女性で短く、男性で長い傾向があった。ステージN3までの潜時は、TETRAばく露下では女性で短く、男性では影響はほとんどなかった。睡眠期間中の覚醒時間は、TETRAばく露下では女性で短く、男性で僅かに長かった。GSMばく露下では、自己申告の総睡眠時間は女性で長く、男性で短い傾向があった。覚醒回数は、GSMばく露下では女性で少なく、男性で多い傾向があった。GSM900及びTETRAばく露は女性でより強い影響が生じたことから、ヒトの睡眠に対するRF電磁界の影響に関しては、性別が問題となりそうである、と著者らは結論付けている。但し、性別に関わらず、観察された変化はいずれも、RFばく露の睡眠妨害作用を示すものではなく、この影響には皮膚に関連した体温調節メカニズムが介在しているかも知れない、と著者らは述べている。
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