[ナノメータ解像度での生体膜水和層における無線周波電磁界の吸収と加熱] tech./dosim.

この研究は、巨大分子構造と無線周波（RF）電磁界との相互作用を理解するために、従来の有効媒質理論を超越してナノメータ解像度で誘電的吸収と加熱を記述した。生体膜を事例とする多元尺度理論により、(i) 水に浸したDPPC脂質二重層での吸収スペクトラムを十分な空間分解能で表す原子レベルのシミュレーション、(ii) 平面または球状の細胞モデルにおける電界分布の計算、(iii) 定常的RF放射下での温度分布のナノメータ解像度での予測を行った。その結果、原子レベルシミュレーションでは、厚さ2 nmの水和脂質膜が10 MHzから100 GHzまでの広い周波数範囲のRFを強く吸収することが示された；吸収強度は入射波の向きに大きく依存する；球形細胞モデルでは、赤道環でRF吸収が大きく高まり、細胞内に温度勾配を生じさせる；通常の通信用電磁界の条件下では絶対温度上昇は小さいものの、原子レベルの尺度で温度勾配の予測が可能であることが示された、と報告している。