研究のタイプ: レビュー/サーベイ論文

[イン・ビトロでの高周波電磁界の哺乳類細胞に対する遺伝毒性:ナラティブ統合を用いた系統的レビュー] review

Genotoxicity of radiofrequency electromagnetic fields on mammalian cells in vitro: A systematic review with narrative synthesis

掲載誌: Environ Int 2024; 193: 109104

過去数十年にわたり、ワイヤレス通信技術から発せられる高周波電磁界RF、100 kHz - 300 GHz)へのばく露による人体への悪影響の可能性について大きな懸念が高まっている。国際がん研究機関は2011年、RFを「ヒトに対して発がん性があるかもしれない」と分類したが、証拠は弱く、決定的ではないことを強調した。このトピックに関する科学文献の最新の系統レビューでは、特にメカニズム研究について証拠が不足している。この論文の著者らは、イン・ビトロ実験モデルでRFによって誘発される遺伝毒性効果に関する科学文献の系統レビューを実施し、哺乳類培養細胞誘発される影響の信頼性と証拠レベルを評価した。対象研究の適格基準、情報源、およびバイアスリスクを評価するために開発された方法に関する詳細は、公開されたプロトコル(Romeo et al. 2021)に報告されている。情報源として、PubMed、Web of Science、EMF-Portalデータベースを用いた(最終検索日2022年12月31日)。系統レビューの作成にあたっては、イン・ビトロ研究の評価に適応した、米国国家毒性プログラム・健康評価翻訳局(NTP-OHAT)が提示するガイドラインに従った。意味のあるグループ(エンドポイント)とサブグループ(ばく露パラメータ)に従って分類したデータを表にまとめることで、証拠の系統的な統合を行った。その結果、特定された7750報のうち159報の論文をレビュー対象に包含した。抽出したデータから、1111件の実験(多様な生物学的および電磁気的パラメータの独立した特定の組み合わせとして定義)を特定した。レビューした研究の大部分(80%)では、RFばく露による統計的に有意な遺伝毒性作用は認められず、ほとんどの「肯定的」な研究は品質が「中程度」から「低い」と評価され、主要なバイアス領域では否定的な評価が下された。質的証拠の評価はエンドポイントレベルで実施し、その後エンドポイント間で統合した。これは RFばく露に関連した哺乳類培養細胞における遺伝毒性作用に関する科学文献の初めての系統レビューであり、透明性のある報告方法、事前に定義された包含基準、およびバイアスに対する感受性の正式な評価の使用により、この特定のトピックに関する以前の統合からの結論を確認し強化している。証拠の限界には、発見がグラフ表示のみで頻繁に報告されていること、および実験データの大きな異質性があり、メタ分析が不可能であった。ばく露が結果に重大な影響を及ぼすことを報告した研究に限定した評価では、RFが哺乳類細胞遺伝毒性作用を誘発するという証拠に対する全体的な信頼度は「低い」との評価に達した。但し、レビューした研究の80%では、ばく露の特徴、レベル、期間に関係なく、大多数のエンドポイント、特に不可逆的なエンドポイントにRFばく露が影響を及ぼさないことが示された(影響がないことを示す「中程度」の証拠)。従って、このレビューに含まれる論文の分析は定性的ではあるものの、RFばく露がイン・ビトロでの遺伝毒性作用の発生を増加させないことを示唆している、と著者らは結論付けている。

ばく露