[海底送電ケーブルから生じる電磁界はアメリカイチョウガニ（Cancer productus）の移動に影響しない] med./bio.

海洋再生可能エネルギー（MRE）デバイスは、洋上風力や波力エネルギーを活用することで従来のエネルギー源を効果的に補完し、エネルギーグリッドを支えながら気候変動に対抗することができる。MRE開発が進展する中で、これらのインフラプロジェクトが海洋環境に与える影響を予測することが重要である。潜在的な影響の一つとして、通電された海底送電ケーブルによる電磁界の局所的な変化が挙げられる。多くの海洋生物は主に渡りや方位の目的で電磁界に敏感であるが、電磁界が無脊椎動物に与える影響についての強固な結論は得られていない。海底を移動するカニなどの生物は、通電された海底ケーブル近くでより強い電磁界にばく露される可能性がある。米国西海岸は、新興のMRE開発のホットスポットであると同時に、国内最大のカニ漁業の本拠地であるため、開発が漁業に与える潜在的な影響についての懸念がある。この研究は、既存のMRE設置に関連するケーブルに類似した通電ケーブルの存在下でのアカニシガニの反応を確認し、環境条件も考慮した。この研究の著者らは、通電されたケーブル近くの局所的な磁界を定量化し、ケーブルおよび対照領域でのカニの反応を定位での二択実験ケージを用いて調べ、水流の方向／速度および磁界強度などカニの反応に影響を与える可能性が高い変数を記述および定量化した。その結果は先行研究と良好に一致していた。1）カニはケーブルを越えるか越えないかに対する嗜好を示さなかった。2）カニは通電ケーブルの有無に関わらず西方向への移動を好んだ。3）通電ケーブルがない場合は西方向への移動の頻度がさらに高まったが、ケーブルの越え方や移動方向の嗜好は電磁界によって影響を受けなかった。4）これらのケーブルによる電磁界は時間とともに一貫しており、1 m未満の距離でバックグラウンドレベルに減衰した。この情報は、再生可能エネルギー開発に関する持続可能で情報に基づいた政策決定を行い、MRE開発が進展する中でこの技術が地域の漁業と共存できるようにするために重要である、と著者らは結論付けている。