[大電流架線環境付近の乗客に対する電磁界ばく露の計算解析] tech./dosim.

Computational analysis of electromagnetic field exposure in passengers near high- current contact wire environments

掲載誌: Radiat Prot Dosimetry 2024; 200 (14): 1329-1338

鉄道駅の電磁環境は、牽引電流電圧、パンタグラフと架線のアーク、機関車の制動、車輪とレールの転動アーク、通信システムなど、さまざまな要因によって生成される電磁界で構成されている。この研究は、ヒト組織における電磁界の分布を分析するため、電磁シミュレーションソフトウェアを用いて、3つのプラットフォームに6本の軌道接触ワイヤと4人の待機乗客を含むモデルを作成した。これを用いて、マルチトラック高速鉄道駅の接触ワイヤにおける高電流によって生成される磁界環境を分析した。異なる接触ワイヤの負荷を変化させ、プラットフォーム上の待機乗客の異なる位置における電界磁束密度の分布を調べた。その結果、トラックが占有されていない場合、プラットフォーム上の視覚障害者誘導用通路およびその1m以内の乗客のヒト組織電界磁束密度の最大値は、それぞれ17.6 mV/mおよび52.7 μTであった。これらの値は、トラックが占有されている時と比較して、それぞれ9.28 mV/mおよび16.4 μT増加した。より多くの接触ワイヤに電流が流れると、プラットフォーム上の同じ位置でのヒト組織電界モードおよび磁束密度モードが増加した。特に、6本のトラックの接触ワイヤに同時に電流が流れると、異なるプラットフォームの視覚障害者誘導用通路における待機乗客の組織電界モードおよび磁束密度モードの最大値はそれぞれ29.6 mV/mおよび88.1 μTとなった。これらの最大値は、国際非電離放射線防護委員会ICNIRP)のガイドラインにおける一般公衆の電磁界ばく露制限値よりも低い。この研究結果は、6本のトラックを持つ鉄道駅の接触ワイヤによって生成される磁界環境が、プラットフォーム上の視覚障害者誘導用通路およびその1m以内の待機乗客の人体組織健康リスクをもたらさないことを示している。これらの知見は、電化された鉄道交通の設計に関する関連基準の策定、および電磁干渉抑制と人間の生体電磁気の保護に貴重なデータ参照を提供できる、と著者らは結論付けている。

ばく露