この研究は、電気自動車の車内の電磁環境を、心臓ペースメーカーを装着した乗客を対象に、駆動モーターをばく露源として調べた。車体、人体、心臓、および心臓ペースメーカーを組み込んだ計算モデルを構築し、有限要素法を用いて乗客の体と心臓における誘導電界、比吸収率、および温度変化を計算した。その結果、乗客の誘導電界の最大値は足首で発生し、その値は60.3 mV/mであることが示された。心臓の誘導電界は胴体よりも高く、最大値(283 mV/m)はペースメーカー電極の周囲で生じた。人体の最大比吸収率は1.08*10^(−6) W/kgであり、電極近傍の心臓では2.76*10^(−5) W/kgであった。また、人体胴体、心臓、およびペースメーカーの最大温度上昇は、それぞれ0.16*10^(−5) ℃、0.4*10^(−6) ℃、0.44*10^(−6) ℃で、30分以内に観察された。従って、人体および心臓における誘導電界、比吸収率、および温度上昇は、いずれも国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインを下回ることが確認された。ペースメーカー電極における電界強度およびペースメーカーの温度上昇は、ICNIRPおよび国際標準化機構(ISO)14708-2の医療機器規格の要件を満たしている。よって、この研究では、電気自動車のモーター運転による電磁放射は、心臓ペースメーカーを装着した乗客の健康に対して安全リスクをもたらさないことが示された、と著者らは結論付けている。
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