この系統的レビューの著者らは、ヒト被験者における高周波(RF)電磁界ばく露が自己申告の非特異的症状に及ぼす影響を体系的に評価し、RFばく露の存在または不在の認識の正確さを評価した。レビュー包含クライテリアは、一般人口集団および電磁界を原因と考える本体性環境不耐性(IEI-EMF)を呈する人々を対象に実施した実験研究(言語は問わない)とした。Medline、Web of Science、PsycInfo、Cochrane Library、Epistemonikos、Embase、EMF-Portalを2022年4月まで検索した。米国国家毒性プログラム・健康評価解釈局(NTP-OHAT)のガイドラインを用いてバイアスのリスク(RoB)を評価した。無作為効果メタ分析と感度分析を適宜用いて研究を合成した。その結果、41の研究が包含された。これらは主に欧州でのクロスオーバー試験で、合計2,874人の参加者が含まれた。主たるアウトカムを考慮し、10個のばく露-結果のペアのメタ分析を実施した。全ての証拠は、症状に対するばく露の影響が無いか小さく、有意ではないことを示唆しており、証拠の確かさは高い(3個の比較)、中程度(4個の比較)、低い(1個の比較)、非常に低い(2個の比較)であった。一般人口集団での頭部ばく露の影響(標準平均差、正の値は症状の存在を示す)は、頭痛で0.08(95%信頼区間:−0.07から0.22)、睡眠障害で−0.01(−0.22から0.20)、複合症状で0.13(−0.51から0.76)であった。全身ばく露の影響は、頭痛で0.09(−0.35から0.54)、睡眠障害で0.00(−0.15から0.15)、複合症状で−0.05(−0.17から0.07)であった。IEI-EMFの人々の標準平均差は−0.19から0.11の範囲で、全ての信頼区間がゼロの値を横切っていた。更に、入手可能な証拠は、研究参加者が偶然に期待されるよりも電磁界ばく露状態を認識できないこと、IEI-EMFの人々が一般人口集団よりも電磁界条件をより良く判定できないことを示唆していた。レビューした研究での実験条件は、ばく露の継続時間、周波数、距離、位置の点で実生活状況と大きく異なる。ほとんどの研究は、一般人口集団よりもRF電磁界に対して強靭である可能性が高い、若く健康なボランティアを対象に行われた。この系統的レビューの関心のある結果は、自己申告の症状である。入手可能な情報では、急性ばく露を超えるばく露の潜在的な影響や、高齢者や慢性疾患の患者を評価することはできなかった。IEI-EMF群における実際の電磁界の影響が、感受性のない被験者と混在することによって隠されてしまった可能性は排除できない。但し、症状の報告および/または電磁界の認識に関する研究では、IEI-EMF群に特に脆弱な人々が存在するという証拠は見つかっていないが、ボランティアが電磁界ばく露の存在または不在について情報を得た非盲検誘発研究では、そのような違いが一貫して観察されている。入手可能な証拠は、ばく露制限値以下のRF電磁界への急性ばく露が症状を生じることはなく、日常生活においてこれに対応する主張は認知上のものであり、実際の電磁界ばく露の状態に関連していないことを示唆している、と著者らは結論付けている。
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