電気電子学会(IEEE)と国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)は、0-300 GHz(非電離)周波数にわたる電磁界へのばく露に対する制限値を確立している。これには、IEEEが0-110 MHzに対して特定している接触電流(CC)についての制限値が含まれる(ICNIRPはCCについて「ガイダンスレベル」を提示している)。どちらの制限値も、潜在的に有害な影響に対する防護を希求している。これには、100 kHz未満の周波数での不快な電気刺激と、100 kHz超の周波数での組織の過剰な加熱が含まれる。CCはほとんどの場合、接地していない人物が接地している物体と接触する場合の電界ばく露と関連していて、接触点(通常は手)を通じた短絡電流(ISC)を伴い、これは垂直偏波電界にばく露された自立する人物の接地している足を通じた電流に相当する。これら二つの量の物理的なつながりは、それぞれに対するばく露制限値が互いに一致することを示しているが、特に100 kHz-110 MHzの周波数に関して、現時点ではそうなっていない。この総説の著者らは、IEEE C95.1-2019規格の改定のための勧告に特に焦点を絞っている。この規格における100 kHz超での電界ばく露制限値(ばく露参考レベル:ERL)は、同規格に記述されているCCに対するERLよりも相当大きな電流を生じる。注目に値する最も重要なシナリオは、接地している導体と皮膚との接触断面積1 cm^2を通じた指の接触に関するもので、この場合、電界に対するERLでの温度上昇率が熱傷を生じるのに十分なほど急激なものとなり得る。この温度上昇率は接触点の皮膚の湿気/乾燥(即ち皮膚のインピーダンス‐この値は変動が大きい)に強く依存し、乾燥度が高い(皮膚のインピーダンスが大きい)ほど温度は急上昇する。この「接触」シナリオにおける傷害の可能性を緩和する2つの主な救済策は、(a) 全ての場合において指の接触の時間を1秒に制限すること、および(b) 100 kHz-30 MHzの電界に対するERLを「ホッケースティック型」の曲線から、この周波数範囲にわたって「嵩上げ(ramp)」するように改定することである。潜在的に危険なシナリオの現実世界での広がりを考慮したこれらの対策は、有害な結果に対して現在よりも大きな防護を提示することが望ましい。IEEE C95.1規格では、把持接触(grasp contact:手のひらで15 cm^2)および関連する手首の加熱、加えて自立誘導からの足首の加熱に対する制限値も規定している。但し、これらのシナリオでは、手首および足首の断面積が比較的大きいために組織の温度上昇率が比較的低いことから、指での接触よりも管理が容易である。よって、把持に対する勧告は個別に扱うことができる。IEEE C95.1規格で同定されているが扱われておらず、更なる注目に値する2つの論点のうちの1つ目は、接地している人物が、電界中にあって接地していない物体に接触する状況で、これについては単一のERLに対して従順ではない無数のシナリオがある。2つ目は、伸ばした手足と電界にばく露した物体との間のアーク放電で、全てシナリオの中で最も危険であろうと考えられる。どちらのシナリオもステレオタイプ化できず、ケースバイケースで扱わなければならない。IEEE C95.1-2019規格(およびICNIRPガイドライン)の将来の改定では、これらの状況における潜在的悪影響に対する防護を提示するための戦略に向けた洞察の改善から恩恵を受けるであろう、と著者らは結論付けている。
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