85 kHzまでの中間周波(IF)磁界はワイヤレス電力伝送(WPT)システムの構成要素の一つであるが、IF磁界ばく露に対する生体安全性の評価に必要な入手可能なデータはほとんどない。このため、証拠に基づく評価データの蓄積が喫緊の課題である。特に、仮にヒトが事故または故障によってIF磁界にばく露される場合、高強度のIF磁界に短期間ばく露されるリスクが高まる。この研究は、既存のばく露装置を改善し、動物を3秒間隔で間欠的にばく露できるようにした。このシステムにより、コイルから発生する熱を制御しつつ、マウスを高強度のIF磁界(周波数82.3 kHz、誘導電界87 V/m:国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の職業ばく露に対する基本制限レベルの3.8倍)にばく露することができた。IF磁界ばく露後のイン・ビボでの遺伝毒性を、小核試験、Pig-aアッセイ、およびgptアッセイで評価した。造血細胞での小核試験およびPig-aアッセイの結果、ばく露群では擬似ばく露群と比較して、網状赤血球にも成熟赤血球にも有意な増加は認められなかった。生殖細胞での小核試験およびgptアッセイの結果、IF磁界ばく露は遺伝子または染色体の異常を生じなかった。これらのデータに基づけば、この研究で用いた体細胞および生殖細胞へのIF磁界ばく露には遺伝毒性作用はなく、これらの知見はIF磁界の安全性評価の有効なデータとしてWPTシステムの広範な利用に貢献し得る、と著者らは結論付けている。
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