この総説の著者は、電磁過敏症(EHS)について以下のような見解を示している。EHSは「電磁界を原因と考える環境不耐症(IEI-EMF)」またはマイクロ波病としても知られているが、世界保健機関(WHO)は電磁界ばく露がその原因だとは見なしていない。EHSは世界中のどこでも疾病として認められていない。幾つかの研究では、何らかの形のEHSを経験したと思われる人々は1-10%と推定されている。但し、EHSについての診断クライテリアがないことから、これらの推定は過少または過大評価かもしれない。大多数の人々が電磁界にばく露されているため、電磁界によってEHSを発症する可能性は実質的な公衆衛生問題であり、EHSを発症する個人レベルのリスクが仮に低いとしても、地球規模でこれに対処することが望ましい。WHOは、EHSの人々が経験する症状は深刻で、日常生活を著しく阻害するかもしれない、と認めている。しかしながら、国際的な、および各国での文献の広範な分析がなされたものの、その原因が何であれ、EHSに対処するための保健政策の策定のための尽力は今のところなされていないようである。WHOや、電磁界の安全規格を制定している国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)および電気電子学会・電磁界安全性国際委員会(IEEE-ICES)の提言に従う各国政府は、EHSに苛まれている自訴者に対する実践的な保健政策の助言を何ら策定していない。しかしながら、EHS自訴者が経験する症状は彼らの安寧に影響しており、WHOの憲章に従えば、これは健康上の問題である。よって、EHSの原因が何であるかということとは独立に、統一的な保健政策を策定することで、この疑いのない安寧の阻害に地球規模で対処することが望ましい。更に、WHO、ICNIRP、IEEE-ICESは、EHSの原因と考えられるものについての信頼できる科学的証拠を創出するための研究を擁護し、支援することが望ましい。そのような研究なしには、診断方法ならびに可能性のある緩和のためのアプローチを開発することは不可能である。WHOは、各国政府が包括的で共通するEHS保健政策を今すぐ策定するのを擁護することが緊急に必要である、と著者は結論付けている。
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