この論文の著者らは、米国連邦通信委員会(FCC)および国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の高周波(RF)電磁界ばく露限度の根拠について、以下のように批判的にレビューしている。FCCおよびICNIRPは1990年代後半、RF電磁界の悪影響からの一般公衆および労働者の防護のためのRFばく露限度を採用した。これらの限度は、1980年代に実施されたサル5匹およびラット8匹での40-60分間のばく露に関する行動学的研究の結果に基づき、見かけ上の閾値である比吸収率(SAR)4 W/kgに恣意的な安全係数を適用している。この限度は、生物学的影響は組織の過剰な加熱によるものであり、仮定されたSARの閾値未満では悪影響は生じないという2つの重要な仮定、ならびに12の仮定(FCCもICNIRPもそれらを特定していない)に基づいている。この論文の著者らは、RF放射についての過去25年間の包括的な研究がFCCおよびICNIRPのばく露限度の基礎をなす仮定を無効にし、公衆衛生上の危険を提示し続けている、と主張している。仮定されたSARの閾値未満で観察されている悪影響には、活性酸素種の非熱的な誘導、DNA損傷、心筋症、発がん性、精子の損傷、電磁過敏症を含む神経学的影響、が含まれる。また、多数のヒト研究で、RFばく露と脳および甲状腺がんのリスク上昇との統計的に有意な関連が認められている。FCCおよびICNIRPは2020年、この論文で著者らがレビューした証拠に照らして、1990年代に確立された従来と同じ限度を再確認した。結果的に、誤った仮定に基づくこれらのばく露限度は、短期的または長期的なRFばく露から労働者、子ども、過敏な人々、一般公衆を適切に防護しない。よって、ヒトおよび環境に対する健康防護のためのばく露ガイドラインが喫緊に求められる。特に、それについての適切な健康影響研究がない第5世代移動通信(5G)からの新たな形態を含む、RFへの人々および環境のばく露が世界的に増加していることから、これらの限度は、間違った仮定ではなく、科学的証拠に基づいたものでなければならない、と著者らは主張している。
このウェブサイトはクッキー(Cookies)を使って、最善のブラウジングエクスペリエンスを提供しています。あなたがこのウェブサイトを継続して使用することで、私たちがクッキーを使用することを許可することになります。