研究のタイプ: 疫学研究

[小児および若年者のワイヤレス電話使用と神経上皮性脳腫瘍:国際研究MOBI-Kidsからの結果] epidem.

Wireless phone use in childhood and adolescence and neuroepithelial brain tumours: Results from the international MOBI-Kids study

掲載誌: Environ Int 2021; 160: 107069

ここ数十年の間、モバイル通信デバイス、特にワイヤレス電話(携帯電話およびコードレス電話)の使用、とりわけ若年者による使用が大幅に増加していることから、それが脳腫瘍リスクを高めるかもしれないという可能性が懸念されている。ワイヤレス電話の使用(特に、その結果としての高周波RF)および超低周波(ELF)電磁界へのばく露)が若年者における脳腫瘍リスクを高めるかどうかを調べるため、14か国(オーストラリア、オーストリア、カナダ、フランス、ドイツ、ギリシャ、インド、イスラエル、イタリア、日本、韓国、オランダ、ニュージーランド、スペイン)での症例対照研究MOBI-Kidsが実施された。2010-2015年の期間に、10-24歳の脳腫瘍症例899人、および、診断日、研究地域および年齢で症例とマッチングした(虫垂炎の手術を受けた)対照1910人を採用した。参加率は症例で72%、対照で54%であった。症例および対照の平均年齢はそれぞれ16.5歳および16.6歳で、57%が男性であった。大多数の参加者は、最も若い年齢グループでもワイヤレス電話ユーザーで、相当数の長期間ユーザー(10年超)が含まれていた:全体で22%、20-24歳で51%。大半の腫瘍神経上皮型(NBT;n = 671)で、主に神経膠腫であった。NBTのオッズ比OR)は、特に15-19歳の年齢グループで、ワイヤレス電話の使用開始からの期間、累積通話件数および累積通話時間の増加に伴い低下するように見えた。腫瘍部位での累積RF比吸収エネルギーおよびELF誘導電流密度の推定値の増加に伴うORの低下傾向も認められた。更なる分析では、この研究における1未満のORの大多数は、携帯電話ばく露による未知の因果的予防効果を示すものではなさそうであることが示唆された:これ[1未満のORの大多数]は少なくとも部分的には、近親者による記憶想起の差異、および症例の診断前の電話使用に影響を及ぼす前駆症状によって説明可能である[訳注:例えば、左側の頭部に脳腫瘍を発症した症例は、脳腫瘍診断される前から前駆症状によって左耳の聴力が低下するので、右耳で電話を使用するようになる。結果的に、左耳での電話使用と左側の頭部での脳腫瘍の発症との関連(OR)が見かけ上は低下する]。但し、著者らが測定しなかった発生源からの残された交絡は排除できない。全体として、この研究では、若年者におけるワイヤレス電話の使用と脳腫瘍との因果関係の証拠は示されなかった。しかしながら、上述のバイアスの発生源のため、小さなリスク上昇を排除することはできない、と著者らは結論付けている。

ばく露

この論文に対するコメント