この論文は、性成熟期の精巣の発達における高周波(RF)電磁界の時間毒性とそれに関与する分子経路を調べた。4週齢のマウスを1800 MHz、比吸収率(SAR)0.50 W/kgのRFに毎朝および毎夜、3週間にわたってばく露した後、精巣の病理学的変化および機能的指数を判定した。また、長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)マイクロアレイおよびGO/KEGG経路分析を用いてlncRNA発現プロファイルを判定し、その潜在的機能を予測した。lncRNAのシスおよびトランス調節を調べ、Cytoscapeソフトウェアを用いて相互作用ネットワークを構築した。その結果、RFばく露は性成熟期のマウスの精巣での幅広い病理学的変化につながった。精巣の重量および毎日の精子産生は減少し、テストステロン分泌は低下した。更に、RFは精巣のlncRNAの発現における調節不全を生じた。この著者らは、朝および夜のRFばく露に関連したlncRNAの差次的発現を、それぞれ615個および183個同定した。朝のRFばく露群および夜のRFばく露群の両方における15個の差次的発現lncRNAから6個のlncRNAを選択し、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)で検証した。朝のRFばく露による差次的発現lncRNAは、ファンコーニ症候群、代謝過程、細胞周期、DNA損傷、DNA複製を含む、多くの異なる経路と強く相関していた。トランスレギュレーション分析では、TCFAP4、NFkB、HINFP、TFDP2、FoxN1、PAX5といった、複数の転写因子調節経路における差次的発現lncRNAの関与が示された。これらの転写因子は全て、精巣の発達の調節、細胞周期の進行、精子形成における関与が示されている。これらの知見は、精巣に生じる毒性およびlncRNAの発現の変化には、朝と夜の1800 MHz RFばく露によって差異が生じることを示唆しており、RFばく露による発達中の性成熟期の精巣の損傷において差次的発現lncRNAが重要な役割を担っていることを示している、と著者らは結論付けている。
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