[高周波の生体影響研究の質を改善する:アメとムチの必要性] comment

Improving the Quality of Radiofrequency Bioeffects Research: The Need for a Carrot and a Stick

掲載誌: Radiat Res 2021; 196 (4): 417-422

この論評の著者らは、第5世代(5G)移動通信システムの「高帯域」を含む、ミリ波帯(30-300 GHz)のすぐ下にある6 GHzを超える高周波RF)エネルギーについての研究ニーズについて以下のように考察している。2020年後半の時点で、6 GHzを超えるばく露に関する約100報のRF生体影響研究が発表されており、そこでのばく露レベルおよび周波数は広範にわたる。これらの研究の大多数は、統計的に有意なばく露の影響を報告しており、そのうちの多くは国際的な安全ばく露限度の範囲内である。この論評は、6 GHzを超えるRFばく露に関する31報の遺伝的損傷研究を、以下の2つの品質評価基準の文脈において調べた。その基準とは、1. 健康に関連する研究の系統レビューに用いられる「バイアスリスク」(RoB)基準、2. 異なる学術的アプローチ(メタ科学)からの研究の質についてのより広範な基準、である。この31報の研究は、遺伝的損傷の様々な指標について、統計的に有意なばく露の影響を幾つか報告している。これらの影響が仮に実際のものであるとすれば、RFの発がんリスク評価に対して重大な意味を持つことになる。しかしながら、これらの研究には全体として、サンプルサイズが小さい、複数のRoB基準を満たしていない、統計学の利用が稚拙である、仮説や分析方法を事前に規定していないといった、有意な技術的弱点があり、これらは全て、偶然に間違った発見をする可能性を高める。この論評の著者らは、RFの生体影響研究の信頼性を高め、社会的に議論の余地のあるこのトピックについての保健当局によるレビュー促進するため、「アメとムチ」アプローチを提唱している。アメとは「質の高い研究を支援するための適切な資金提供」、ムチとは「生体影響研究の論文原稿のより厳格なレビュー(これにはレビュー実施者が研究の質を評価するための明確な指導を含む)」である。

ばく露