リスクコミュニケーションメッセージがフレーミング(縁取り)される方法は、受け手のリスク認知に影響力を及ぼし得る。あるリスクコミュニケーションメッセージが、完了した「リスク評価」(公衆に対するリスクの程度をばく露レベルの関数として特定すること)としてフレーミングされるか、あるいは「ハザード同定」(ある環境因子が原理的にヒトにおける健康への悪影響を生じ得るかどうかに関する声明、そのような影響が実際に生じ得るかどうかは扱わない)としてフレーミングされるかが、特に重要な要素であるかも知れない。この研究は、ハザード同定としての、またはリスク評価としての「携帯電話と健康」に関するリスクコミュニケーションメッセージのフレーミングが、読み手のリスク認知に影響するかどうかを初めて調べた。オンライン調査の参加者を3群に割付け、それぞれに対し、携帯電話とがんに関する国際がん研究機関(IARC)の報道発表の原文(第1群)、その報道発表をリスク評価としてフレーミングすることを意図した文言を追加したもの(第2群)、その報道発表をハザード同定としてフレーミングすることを意図した文言を追加したもの(第3群)を提示した。その結果、ハザード同定としてのメッセージのフレーミングにより、その報道発表がリスク評価であると信じる人々の数が減少した一方、リスク評価としてのフレーミングにより、その報道発表がリスク評価であると考える人々の数を増やすことはできなかった。但し、群間でリスク認知に差は認められなかった。無線周波(RF)電磁界のリスク認知に対するフレーミング効果が生じなかった理由を確認したところ、実験群に関わらず、リスクとハザードについての既存の解釈からリスク認知が強く予測されることがわかった。IARCがハザード同定を実施したと信じている参加者はリスク認知が低く、携帯電話からのRF電磁界ばく露ががんリスクを高めるということをさほど確信していなかった。この研究結果は、ハザード同定とリスク評価との違いを理解することの重要性を示すものであり、RF電磁界のリスクコミュニケーションにおいては、ハザードとリスクとを区別するための力を一般公衆に与えるための手段を開発する必要があることを示唆している、と著者らは結論付けている。
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