国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインおよび電気電子学会(IEEE)の規格は、電磁界へのヒトのばく露に対する安全限度を策定している。低い周波数では、身体内部の誘導電界と外部の磁界との関連付けにおいて、極少数の計算人体モデルまたは単純化された幾何学形状が用いられている。その結果、ICNIRPガイドラインとIEEE規格はどちらも、個人間のばらつきを考慮せずに、外部磁界に対するばく露参考レベルを導出している。この論文で著者らは、50 Hzの一様な磁界にばく露された118人の脳に誘導された、最大電界強度のばらつきについての定量的データを提示している。著者らは、年齢や頭蓋骨の容積といった個人的特徴、ならびに入射磁界の向きが、電界のピーク値に体系的に影響することを見出した。高齢者では誘導電界強度がより高く、これは年齢に関連した脳の解剖学的変化によるものである可能性がある。頭蓋骨の容積が大きいほど、また入射磁界が横向きの場合に、電界強度のピーク値は高かった。更に、ばく露制限の導出の際にICNIRPが用いた解剖学的モデルから提示される電界のピーク値は、ここで得られた値よりも相当高かった。対照的に、IEEEが用いた楕円ばく露モデルからは、電界のピーク値はより低かった。この結果は、異なる解剖学的モデル間の誘導電界のドシメトリにおける不確かさを低減するものであり、ここで得られた結果は、低周波電磁界ばく露からの人体防護のための参考レベル導出の際の適切な低減係数の選択の基礎に用いることができる。これらの知見は現行のガイドラインおよび規格の改定およびハーモナイゼーションにおいて有益である、と著者らは結論付けている。
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