この研究は、脳腫瘍発生率に対する診断技術の向上及び携帯電話使用の増加の影響力を確認するため、オーストラリアでの3つの期間(1982-1992、1993-2002、2003-2013年)における脳腫瘍の発生率の時間的傾向を、人口集団ベースの生態学的研究で調べた。また、携帯電話使用が大幅に増加した期間(2003-2013年)に観察された発生率を、様々な相対リスク、潜伏期間及び携帯電話の使用シナリオを適用して幾つかの期間について予測(モデル化)した発生率と比較した。1982-2013年に診断された原発性の脳のがんについての全国がん発生登録データを用いた。オーストラリア全国から20-59歳の脳のがん症例(男性10083人、女性6742人)が調査対象として適格とされた。主な測定指標として、ポアソン回帰分析に基づく脳腫瘍発生率の年間変化率(APC)を用いた。その結果、脳腫瘍の発生率全体は、3つの期間全てで安定していた。1993-2002年の期間に神経膠芽腫の増加が認められた(APC = 2.3、95%信頼区間(CI)= 0.8 - 3.7)が、これは当該期間におけるMRI使用の進歩によるものである可能性が高いとされた。神経膠腫(APC = -0.6、95% CI = -1.4 - 0.2)及び神経膠芽腫(APC = 0.8、95% CI = -0.4 - 2.0)を含む脳腫瘍のいずれのタイプにも、携帯電話使用が大幅に増加した期間(2003-2013年)における増加は認められなかった。この期間には、携帯電話使用時に最もばく露される部位である側頭葉における神経膠腫の増加も認められなかった(APC = 0.5、95% CI = -1.3 - 2.3)。潜伏期間を最長15年とした場合に予測された発生率は、観察された発生率よりも高かった。これらの結果から、オーストラリアでは携帯電話に帰結し得る脳腫瘍の組織学的タイプまたは神経膠腫の部位における増加はなかった、と著者らは結論付けている。
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