この論評は、米国の国家毒性学プログラム(NTP)の下で実施された、携帯電話の無線周波(RF)放射の発がん性・遺伝毒性に関する動物研究に対する以下の批判(この論評の著者は「根拠がない」としている)に個別に反論している。(1) 同研究で示された影響はラットについてのものであり、ヒトで生じ得るものを代表していない。(2) 同研究のRFばく露レベルはヒトに対するばく露限度よりも遥かに高かった。(3) 同研究のばく露は一般的なヒトのばく露よりも長かった。(4) 同研究の腫瘍に関する知見は、対照群よりもばく露群の生存期間が長かったことに影響されたかも知れない。(5) 神経膠腫と心臓の神経鞘腫の発生率の上昇が雄ラットだけに見られ、雌ラットには見られなかったのは奇異である。(6) 対照群のラットの腫瘍発生率は奇妙に低く、神経膠腫及び心臓の神経鞘腫の発生率は過去のNTP研究で見られたものよりも低かった。(7) 同研究の統計的検出力は低く、がんのリスク上昇の知見は偽陽性である可能性が高い。(8) 病理学的評価では対照群かばく露群かについて盲検化されておらず、先にばく露群、次いで対照群が評価されたことが、評価結果に影響を与えた可能性がある。この論評の著者は、「この研究結果がもし2011年に発表されていれば、(国際がん研究機関による)RFの発がん性評価は『ヒトに対しておそらく発がん性がある』(グループ2A)に分類されていた可能性が高い」と結論付けている。
[注記:この論評の著者は元NTP所属の研究者で、当該研究に直接関与していた。]
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