[多種化学物質過敏症の日本人患者の過去10年間における自覚症状、発症/誘発因子、アレルギー疾患、化学物質ばく露の変化についての調査] med./bio.

Survey on changes in subjective symptoms, onset/trigger factors, allergic diseases, and chemical exposures in the past decade of Japanese patients with multiple chemical sensitivity

掲載誌: Int J Hyg Environ Health 2018; 221 (8): 1085-1096

この研究は、日本人の多種化学物質過敏症(MCS)の患者の自覚症状化学物質ばく露アレルギー疾患有病率、推定される発症/誘発因子を2012-2015年について調査し、1999-2003年に実施した別の調査結果と比較した。今回の調査は前回のフォローアップではない。患者は、MCS専門外来を有する5か所の医療機関で医師に診断され、今回の調査には111人、前回の調査には103人が参加した。対照群は日本に住む一般公衆で、それぞれの調査について1313人及び2382人であった。自覚症状及び化学物質ばく露は環境ばく露感度インベントリを用いて評価した。加えて、参加した医師が記録した臨床的知見から、アレルギー疾患有病率及び推定される発症/誘発因子を評価した。ロジスティック回帰分析及び有意性検定を用いて、今回の調査と前回の調査との差を分析した。その結果、10年前の調査と比較して、(1) 化学物質にばく露されている患者に影響を及ぼす要因に関して、影響を受けた患者の比率が有意に減少したのは僅か2つ(殺虫剤、間接喫煙)のみであった。(2) 患者では、化学物質不耐症及びその他の不耐症のスコア、ならびに生活へのインパクトが有意に増加した。(3) MCS患者におけるアレルギー疾患有病率に関しては、気管支喘息(調整後のオッズ比(AOR)= 5.19)、アトピー性皮膚炎(AOR = 3.77)、食品アレルギー(AOR = 2.63)が有意に上昇し、花粉症(AOR = 0.38)、薬品アレルギー(AOR = 0.40)が有意に低下した。(4) 10年前にはMCSの支配的な発症/誘発因子と推定されていた建築と改築に関しては、68.9%から35.1%に減少した。対照的に、電磁界(0.0%-26.1%)、香料(0.0%-20.7%)、医学的治療(1.9%-7.2%)が有意に増加し、発症/誘発因子の多様化が確認された、と著者らは報告している。

ばく露