一部の海洋動物は地磁気の局所的な歪みを知覚し、方向付けに利用していることを示す経験的証拠がある。海底電力ケーブルから生じる磁界は同様の歪みを生じ得ることから、大陸棚に沿って移動する動物がケーブルからの磁界に方向付けされ、通常の進路から逸脱してしまうことが懸念される。この研究は、カリフォルニア州ピッツバーグからサンフランシスコをつなぐ長さ85 kmの海底高圧直流送電線「トランスベイケーブル」の影響を調べた。調査対象には、サンフランシスコ川を下流に移動して河口から太平洋に向かうキングサーモン(Oncorhynchus tshawytscha)、および、太平洋から産卵場所のサクラメント川上流を目指して遡上し、産卵後に太平洋に戻るチョウザメ(Acipenser medirostris)の成魚を含めた。詳細な磁気傾度計調査の結果、河口部に架かる橋梁による地磁気の歪みの方が、ケーブル[の磁界]から生じる歪みよりも一桁以上強いことがわかった。標識付けされた多数のキングサーモンが、強い磁界異常を生じる橋梁を通過した。また、チョウザメは河口部を通じて上流の産卵場所および下流に無事に泳ぐことができた。このことから著者らは、橋梁による地磁気の強い歪みは、キングサーモンおよびチョウザメの成魚の自然の季節的な移動パターンに対する障壁とはならない、と結論付けている。
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