プロジェクトは、ばく露評価、ばく露装置開発と細胞毒性実験、リスク政策への寄与の3つで構成された。
1. ばく露評価
無線ネットワーク装置へのばく露を評価した。
対象:GSM、UMTS、LTE、WiFi、WiMAXおよびボディエリアネットワーク(BAN)、RFID応用
電磁界の評価方法:建物内のRF発生源に適用可能な新規の室内伝搬モデルおよび計装(測定プロトコル、新規の校正方法)を開発した。改良された校正方法により、精度が20倍に向上し、ばく露評価および遵守実証の信頼性が向上した。この方法は既に標準および規制当局に採用されている。
人体ばく露の評価方法:外部電磁界と体内のさまざまな組織における電磁界との変換マトリクスを、複雑な人体ファントムを用いた7000以上のシミュレーションから作成し、種々の無線ネットワーク装置へのばく露(SAR)を推定した。これらの方法を適用して、ベルギーおよびギリシャの典型的な室内微小環境(学校、保育園、オフィス、住宅)での無線ネットワーク技術による時間的、空間的RFばく露を推定した。
結果:多様な無線ネットワーク装置からのばく露の平均および範囲の推定値を得た。
ばく露の最大値は、身体と接触した携帯電話(例えば、ポケット内)を無線アクセスポイントとして使用(すなわち、テザリング)している場合に見られた。この状況での最大ばく露は、携帯電話の機種により異なるが、安全基準値を2倍かそれ以上に上回ることがある。
ばく露低減の最も有効な方法は、テザリング中に電話を身体から少なくとも50mm離すことである。200mm以上の距離をおいた場合のばく露は、耳または身体直近で操作するときの最大値に比べ400分の1に低減される。100mm以上の距離をとると、そのばく露は、基地局へのばく露の期待値に比べ25分の1に低減される。この簡単な対策により、無線ネットワーク装置へのばく露を、耳近くで操作する携帯電話へのばく露よりはるかに低い値に保つことができる。
一定サイズのデータパケットの送信での累積ばく露を検討した結果、UMTSとWiFiはほぼ同じランクであるが、GSMはデータ転送速度が低いためにばく露時間が10-100倍長くなり、それに伴い累積ばく露も高くなる。
これらの成果は、ユーザの端末およびアクセスポイントでのばく露の最小化のためのいくつかのガイドライン(IEEE 1528、IEC 62209-1、IEC 62209-2、IEEE C95.3)、および建物内アクセスポイントの最適配置のためのウェブツールなどに反映された。
2. ゲノム完全性に関するばく露実験
無線ネットワーク装置へのばく露がゲノム完全性に与えるかも知れない影響をスクリーニングするためのばく露実験装置を開発し、実験を行った。その結果、先行研究で報告された弱いEMFによるDNA損傷誘導は再現されなかったが、そのようなばく露には直接DNAを損傷する潜在力が無いことについて説得力のある論証も提出できなかった。
3. リスクのガバナンス
行政当局に向けた、適切なリスクのガバナンスのためのガイダンスおよび推奨を作成した。不当なプレコーションとリスクの無視とのバランスについて議論した。
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