オランダ保健評議会(HCN)がこのたび公表したプレコーション原則に関する報告書のキーメッセージは、「プレコーション原則は、政策決定のルールとしてではなく、慎重に不確かさに対処するための戦略として見なした方が良い」ということである。本論文は、このHCNの見解を、電磁界(EMF)の健康影響の可能性という、かなりの不確かさを特徴とする問題に適用したものである。HCNはこれまでに、このEMF問題に関する報告書を公表し、それによって政府の政策に影響を与えてきた。著者達は、これらの報告書の中でHCNが不確かさをどのように取り扱ったか、またそれらが、今回の報告書でHCNが示した「慎重なプレコーション(prudent precaution)」とどのように一致するか、を中心に吟味した。また、比較のため、HCNのカウンターパートであるベルギー高等保健評議会(SHC)のEMF問題に関する報告書も検討した(SHCは政府にばく露低減措置の実施を促したが、HCNはそのような措置は不要との考えを示した)。結論として、以上の分析で得た知識から、諮問組織の役割について、著者らは以下の教訓を得た:科学的な諮問機関は意思決定者に情報を提供するべきで、特定の決定に彼らを導くべきではない;かなり大きな不確かさがある場合、最良の政策オプションについて決定的な助言を与えようとはしない方がよい;科学的諮問機関は様々な政策オプションの提示、その潜在的な影響および科学の限界の説明に努力すべきである;これにより、政策の意思決定者は、利害関係者との協議において、彼らがどの程度大胆あるいは慎重でありたい考えているかを判断し、適合するアクションを選択する力が与えられる、と述べている。
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