この研究は、室内にWLANなどの送受信アンテナが存在するオフィス環境での人体モデルの全身SARを実験的に測定し、その結果をFDTD法による数値計算で検証した。室内の電波伝搬路のモデル化では、送信アンテナと受信アンテナの直線(LOS: the line-of-sight)経路成分と散乱マルチパス成分(DMC:diffuse multipath components)を考慮した。送信アンテナ(Tx:固定)、受信アンテナ(Rx:5cm間隔の10×10の格子点を移動)、さまざまに配置した5個の人体ファントム(半径約12cm、高さ150cm、人体と等価の電気的定数をもつ2層円筒形モデル)からなる実験システムで2.8GHzの送受信を行い、3つのシナリオ下に置かれたファントムの吸収断面積(ACS)と入射電力密度を測定した。シナリオ1、2、3でのファントムの位置は、Txの近傍(大部分がLOS)、Txから残響距離(LOSとDMCが同等)、Txの十分遠方(大部分がDMC)である。その結果、平面波という仮定が成り立つ(遠方シナリオ)場合に測定と計算の結果はよく一致した;全吸収率に対するDMCの寄与を初めて数量的に示すことができ、遠方シナリオではその寄与は90%に達した(但し、入射電力密度自体は近傍シナリオの1%以下になる)、などの所見を報告し、実測による全身SARの評価の可能性について、今後も検討を続けると述べている。
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