<目的>グルタルアルデヒドで固定化した赤血球と、グルタルアルデヒドで固定化していない”生の”赤血球の、定常磁界下での配向状態の違いを明らかにすることを目的とした。<方法>赤血球をPBS-I緩衝液に浮遊させたサスペンションを作成し、8T超電動磁石内にて波長630nmでの透過光測定を行った。赤血球の配向方向に従い透過光強度は増減するため、磁束密度を変化させつつ赤血球の配向度を求めた。次に、赤血球の磁界配向度の磁束密度依存性よりオーダー・パラメータを計算し赤血球全体の磁化率異方性を求めることで、磁界配向の機構の解析を行った。 <結果および結論>普通の赤血球は磁界方向に平行に配向した。一方、グルタルアルデヒドで固定化した赤血球は磁界方向に垂直に配向した。赤血球に含まれるヘモグロビンは、ヘム蛋白に結合した鉄の酸化状態によりスピンの状態すなわち磁性が変化する”生の”赤血球の磁界配向においてヘモグロビンは寄与しないが、グルタルアルデヒドで固定化した場合、細胞膜に常磁性のヘモグロビンが固定されるため磁界配向の方向が90度変化する。この機構は、磁界配向に垂直に配向する鎌状赤血球の中のヘモグロビンの構造から裏付けられた。
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