【背景】電気的遺伝子導入は確立された細胞への遺伝子導入技術であるが、細胞膜を通ってDNAが移行するメカニズムはまだ分かっていない。電気的な細胞内取り込み作用によりDNAが細胞内に入るとの説がある一方、DNAは細胞膜の穴を通って移動させられるという説もあるが、直接的な観察は行われていない。【目的と方法】 ここでは最初の説を研究する。細胞膜プローブFM 1-43FX(細胞膜の染料で細胞内取り込み作用の観察に用いられる)で細胞を染色した後、電気的パルスを与えた。遺伝子導入の閾値より低い強度および高い強度の電気的パルスにより細胞内取り込み作用が刺激されて起こるか否かを調べた。【結果】パルスを与えた後、20分から最大2時間まで観察したが、電界強度に係わらず細胞内取り込み作用の増加はなかった。電気的遺伝子導入はその閾値以上でのみ観察され、またその効率は電界強度につれて増加するので、今回の取り込み作用の観察結果は電気的遺伝子導入と相関していない。【結論】今回の結果から、遺伝子導入において電気的な細胞内取り込み作用は決定的なメカニズムではなく、透過性が高められた細胞膜を通過してDNAが細胞内に入るという仮説の方が最もらしいことが示唆された。今回の結果は電気的遺伝子導入のメカニズムのより深い理解と臨床応用の最適化にとって重要である。
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