【背景】統合失調症(SCZ)患者の作業記憶(WM)過程において、ガンマ帯振動(30 - 50 Hz)の過剰が見られる。WMは、その大部分で背外側前頭前皮質(DLPFC)が介在する情報の維持と操作に関与する認知過程である。反復性の経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、WM過程における認知およびガンマ帯振動活動の増強を示す無侵襲の皮質刺激法を代表するものである。【方法】N-backタスク中に現れるガンマ帯振動活動に対するDLPFCへの20HzのrTMS の影響について、SCZ患者群24人と健常者群22人で比較して調べた。主な知見:rTMS を与える前に、WM負荷をかけた段階でSCZ患者群は健常者よりガンマ帯振動活動を過剰に現わした。rTMSを与えると、最も難しいタスク条件である3-backタスクにおいて、SCZ患者群の前頭部のガンマ帯振動活動は低下し、一方健常者群の活動は高まった。さらに言えば、このようなガンマ帯振動活動への影響は前頭部に特異的であること、頭頂後頭部には見られないことが示された。【結論】ガンマ帯振動活動に対するrTMS の影響がSCZ患者群と健常者群で反対であったことには恒常的可塑性が関連しているかも知れず、そのため、ベースラインの差で決められたガンマ帯振動活動に対するrTMS の影響が違ってくるのかも知れないことを示した。本論文の意義:今回の知見は、SCZにおけるWMの欠陥の根底をなす神経生理学的メカニズムについて重要な洞察を提供し、この疾患における認知の増強のための1つの可能性がある手段としてrTMSによるガンマ帯振動活動の調整が可能であることを実証した。
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