【背景】超低周波の磁界ばく露において最も閾値が低い電気的刺激反応は磁気閃光であり、名目上は8.14 mTの20Hz磁界にばく露した成人でみられる反応である。IEEE standard C95.6 (2002)では、これに相当する値として成人サイズの楕円体における網膜の位置での内部電界を53 mV/ mと計算している。しかし、解剖学的に正確な人体モデルにおける高解像度での網膜および脳でのこのような電界の大きさの特性は不完全にしか分かっていない。さらに言えば、ボクセル人体モデルで計算された組織内の電界の最大値は階段近似誤差を生じ易く、特に低周波ドシメトリではそうなりやすい。【3層球による方法と結果】一様な50Hz磁界のばく露を受けた3層球において、解析解と準静的FDTD法の結果を比較した。FDTD法の結果における階段近似誤差は組織の境界面で見られ、皮膚と空気層の境界面で最大であった。モデルの解像度に依存するが、99パーセンタイル値は、解析解の最大値との差は3%以内であり、解析解の最大値の十分な近似値と考えられるであろう。【解剖学的モデルによる方法と結果】一様な磁界のばく露を受けた成人の解剖学的モデルTAROを2mmおよび1mmでボクセル化した場合、内部電界の99パーセンタイル値の差はほぼ数%であった。様々な人体モデルにおいて、直交する3方向(身体の前後方向、左右方向、上下方向)の磁気閃光閾値レベルの磁界ばく露を受けた場合を比較した結果、脳での内部電界は、解析的なIEEEの閾値53 mV/ mより10%から70%大きくなり、前後方向と上下方向の磁界の場合、網膜での内部電界はおおよそ50%程度小さくなり、左右方向では約15%大きくなった。【結論】電気的刺激の閾値に対して数倍の低減係数または安全係数が適用されていることを考えれば、ボクセル人体モデルで計算された組織内の電界の99パーセンタイル値は、組織内の電界の最大値の推定値としておそらく使用できるであろう。
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