【背景と目的】個人用携帯音楽プレーヤが放射する電磁界による電磁干渉(EMI)が原因の心臓ペースメーカの機能障害が世界中で話題となった。臨床試験で、医師がペースメーカのプログラミングヘッドとiPodを、患者の植込みペースメーカの近くに置いた時、2種類の電磁干渉が観察されたという。著者は、「ペースメーカとiPodとの接近を避けるために警告ラベルが必要だ」と結論した。このようなEMIの“主張”を吟味し、影響がないことを示す知見を提供するために、インビトロ実験を実施した。【方法】iPod音楽プレーヤの様々な機種から放射される低周波磁界を評価するインビトロ実験を行った。プレーヤの表面1cm以内に置かれた3コイルセンサで放射磁界を測定した。極度に局所的な磁界が観察された(1平方cm以内の領域にのみ存在するような)。2本の単極リード線が付いたペースメーカ金属ケースの内部に誘導される電圧も測定した。ペースメーカケースの上部2.7cmの空気中にiPodを置いた。ペースメーカケースおよびリード線は、ANSI/AAMIPC69:2000ペースメーカ電磁両立性基準にしたがって、食塩水で満たされたトルソシミュレータ内に置いた。ペースメーカケース内の電圧を測定した。【結果】磁界放射は、ハードディスクドライブ付きの2種類のiPodケース上の数か所の局所で最も強かった(ピーク値で約0.2μT)。放射磁界の構成成分は、低周波パルス(20msecパルス間隔)で振幅変調された100kHz正弦波信号であった。ペースメーカケース内に誘導された電圧は機器の雑音レベルより低かった。【結論】4機種のiPod音楽プレーヤが放射する磁束密度の強度と空間分布を測定した結果、ケースの近く(1cm)で最大0.2μTのレベルであった。ペースメーカ内部の誘導電圧測定値は機器の雑音レベル以下であった。本研究で観察された結果に基づけば、今回テストしたiPod機器にばく露されてもペースメーカに電磁干渉は生じないと結論される。
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